岡田仁志 世界選手権従軍レポート その10

2010/08/23 | <<一覧に戻る

ブラサカJAPAN、10年目の本気。
in The 5th IBSA World Blind Football Championship 2010
文と写真/岡田仁志


現地時間 2010年8月22日(日)26時20分

閉会式後に催されたプレイヤーズ・パーティの取材を終え、ホテルに戻り、選手団からもらったカップヌードル(ヘレフォードでの最後の晩飯)を食べて、これを書き始めた。これまでは翌日の朝に書くことが大半だったが、明日は朝8時にホテルを出て帰国の途につくため、今夜中に送稿せねばならぬ。最後のUstream配信を終えたウエハラ君は、なんかもう後片付けを始めているようだ。私だけ最後まで働いているような気がする。

……と思ったら、「めざましテレビ」の人たちもまだ働いている模様。煙草を吸いに外に出たら、ディレクターのN氏がスタッフの部屋を訪れ、「スピーカーの音が出ないんで見てもらえます?」と頼んでいた。26日と27日にオンエアするらしいから、そりゃあ大変なんだろうなぁ。私がいることにも気づかなかったから、まったく余裕がないに違いない。まあ、私も帰国翌日が週刊サッカーダイジェストの締切だから、他人事じゃありませんが。大会が終わっても戦いは続く。

ところで、本当にどうでもいい話なのだが、ウエハラ君からもらったロッテのキシリトールを捨てようと思い、しかしこのガムには包み紙がないので「いつも何に包んで捨てるの?」と訊いたら、「あ、ボクは飲む派です」と言うので笑った。飲む派だったかー。「派」を形成できるほどいるのかどうか疑問だが、ちゃんと塩分やら胃液やらで溶けるから大丈夫とのこと。ならばチャレンジしようかとも思ったものの、帰国前に腹を壊すのはイヤなので、ティッシュに包んで捨てた(容れ物の中をよく見たら付箋みたいな「捨て紙」が入っていた)。考えてみれば、この10日間、ろくなものを食ってないわりに腹の具合はいいし、寒暖の差が激しいのに風邪も引かない。帰国して緊張の糸が緩んだときが怖い。というか、帰りたくない。まだ暑いんでしょ? 東京は。

◇中国 1-0 イングランド(3位決定戦)
2年前の北京パラリンピックでは、3-0の大差がついたカードである。しかしイングランドの急成長ぶりと、今大会あまり調子の良くない(モチベーションが低いようにも感じる)中国の様子を見ると、一方的な試合にはならないどころか、イングランドにも十分に勝機があるように思えた。

実際、立ち上がりはイングランドがグイグイと押し込んだ。大敗したブラジル戦のショックは、スタンドの声援が吹き飛ばしてくれたのだろう。好調の9番グリビンが、雲霞のごとく群がる中国ディフェンスをかき分けて、きれいなシュートを放つ。ホスト国のラストゲームらしい、気合いを感じさせるプレーだった。

だが、それ以降は基本的に中国ペース。そのドリブルに振り回されて、フル出場の続くクラークにも疲れが見える。また、コロンビア戦で決勝点をもたらしたような運もなかった。前半9分、中国の11番Ya Feng Wangが放ったシュートは左ポストに弾かれたものの、横っ飛びで防ごうとしたGK(のくせに10番を背負う変わり者の)ルイス・スカイヤーズの頭に当たってゴールイン。それがこの試合で唯一のゴールとなった。後半3分、グリビンが倒されて得たPKをクラークが決めていれば、流れは大きく変わったかもしれない。右に逸れたボールを目で追う私の脳裏を過ぎったのは、言うまでもなく、スペイン戦における佐々木のPKだった。

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決勝ゴールを決めた中国のYa Feng Wang11番)。表彰式ではヤングプレーヤー賞を受賞。

この試合で「へえ」と思ったのは、中国のコーラーがイエローカードを食らったシーン。この人には、興奮すると指示を出しながらゴールネットをつかむ癖がある。それでゴールをゆさゆさと揺さぶるものだから、審判がとうとう警告したのだった。魚住さんは「あれ、もしレッドカードの場合、5分間コーラーなしになるのかなぁ」と言っていたが、どうなんでしょうか。ルールに規定されてるのかな、そんなこと。

◇スペイン 0-2 ブラジル(決勝戦)
10番リカルド、7番ジェファーソン、11番セヴェリーニョ・シウバ、8番ソアレス。ブラジルが先発に起用した4人のフィールドプレーヤーは、このチームのベストメンバーであるのはもちろん、現時点での世界最強メンバーかもしれない。類い希なるテクニックとスピードと決定力を持つ2人のストライカー、中盤をひとりで牛耳るボールハンター(しかもPK職人)、そして、安定感のある冷静なディフェンダー。このチームにどうやったら勝てるのか、私にはわからない。私にわからないのは当然だが、たぶんスペインベンチにもわからなかったのだと思う。破竹の5連勝でファイナルに進出したスペインが、ほぼ何もできずに試合を終えた。ワールドカップでオランダにおかしな負け方をしたセレソンは、B1代表の爪の垢でも煎じて飲むといいかもしれない。

とはいえ、先制するまではかなり時間がかかった。ジェファーソンが何度もゴール前に詰め寄るものの、5試合を無失点で乗り切ったスペインの守備は、そう簡単には崩れない。その堅牢な門をこじ開けたのは、大黒柱のリカルドだった。前半19分、フェンス際の競り合いを制してボールを保持すると、一気に中央に切り込んでシュート。試合は、ブラジルの1点リードで前半を折り返した。

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 スペインのDFを置き去りにするブラジルのリカルド(10 番)。 

 

疑問だったのは、後半のブラジルがストライカーを1枚にして、中国戦と同じ布陣に変えたことだ。ジェファーソンを引っ込め、DFの5番ダミアン・ソウザを投入。リカルドがいる以上、それは決して「守備的な布陣」には見えないわけだが、あまり積極的なやり方とは言えない。しかもスペインは、前半は先発メンバーから外した7番マルティンを後半のスタートから起用している。ひと波瀾ありそうな気もした。実際、スペインにやや押し込まれたブラジルは、後半6分で早くもファウル3つ。スペインにとっては、第2PK一発で勝った中国戦の「夢よもう一度」の展開だ。

しかし、リカルドに代わって入った20歳の若きエース(といってもリカルドだって21歳ぐらいなのだが)が、ブラジルを救った。やはりジェファーソンは、1トップのほうが活き活きと自由に本領を発揮できるようだ。左サイドから切り込んで右足でズドン、といういつものパターンで2-0。スペインは終了1分30秒前にようやく第2PKを得たものの、マルティンのキックはGK正面。南アW杯とは違って「スペイン悲願の初優勝」はならず、ブラジルが3大会ぶり3度目の優勝を果たして、第5回世界選手権は閉幕した。

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 おめでとう、ブラジル!!

 

決勝終了後、ピッチではただちに閉会式が行われた。MVPは、ブラジルのジェファーソン・ゴンサウヴェス。当初このレポートでは「ゴンカウヴェス」と書いてしまったが、ブラジル人のプレスに訊いたら「ゴンサウヴェス」とのこと。お詫びして訂正。ちなみに私の超個人的なMVPはフランスの10番だが、こちらもフランス人のプレスに訊いたら「フレデリック・ヴィレルー」ではなく、どうやら「フレデリック・ヴィルー」であるらしい。最後にフランス語ならではの例のアノ音が聞こえたので困るが、とりあえずカタカナ表記は「ヴィルー」で行きたいと思います。ともあれ、外国人プレスと仲良くなるには、選手名の読み方を質問するのがいちばんだと学んだ。みんな、とても嬉しそうに教えてくれます。私は誰にも訊かれなかったのがちょっと残念だったけど。よその国の選手にこんなに興味を持つ取材者も珍しいのかもしれない。

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 大会MVPのジェファーソン・ゴンサウヴェス(ブラジル)。

 

それはともかく、われらが日本チームはフェアプレー賞を受賞。審判団の採点によるもので、閉会式では三原キャプテンがヘレフォード市長(女性)から記念の楯を贈られた。ミノ(三原)さんはその場で名前を呼ばれて受賞を知ったらしく、人前に出る準備などしていない。ジャージの上着は着ておらず、足元はあろうことかサンダル履きで決勝戦を観戦していた。慌てて両方ともGKゴリ(佐藤)さんに借りたそうだが、そうは見えない堂々たる表彰されっぷりでした。おめでとう、ブラサカJAPAN。最後に「おめでとう」と言えることがあったのが、素直に嬉しい。ありがとう、イングランド。ありがとう、ヘレフォード。たぶん二度と訪れることはないと思うが、私は死ぬまでこの町のことを忘れない。

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 ヘレフォード市長(右)からフェアプレー賞を贈られた三原キャプテン。 

前回、時間がなくて日本戦の記述を端折ったら、読んだ選手たちから「ちゃんと書いてくださいよ~」とブーイングされてしまった。ごめんごめん。今日もプレーヤーズ・パーティでヤス(佐々木)さんやアキ(田中)さんからいろいろ話を聞き、書きたいことは山ほどある。でも、帰り支度もせねばならないので、今夜はもう限界。総括的なことはいずれまたどこかで書きます。最後に(誰とは言わないが)あるチームの関係者が「キレイな人だな~」と気に入って、何度も記念撮影をねだっていたパーティ会場のウエイトレスさんの写真を載せちゃおっかな。

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 パーティの美女。

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